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広島地方裁判所 昭和44年(ワ)278号 判決

主文

被告らは原告に対し、別紙物件目録記載の建物を明渡せ。訴訟費用中、参加によつて生じた部分以外の部分は、すべて被告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

(原告)

主文第一項と同旨及び訴訟費用は被告らの負担とするとの判決並びに仮執行の宣言。

(被告ら)

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

第二  当事者の主張

(請求原因)

一  原告は、学徒に対して物心両面の援護をなすことを目的として昭和二〇年七月一日に設立された財団法人で、その目的達成のための一事業として、東京都をはじめ全国の主要都市に学生収容を目的とする会館を設置しているところ、広島市においても、別紙物件目録記載の建物(以下、本件建物という。)を所有して、昭和二六年五月四日以来広島学生会館の名称のもとにこれを学生の使用に供している。

二  被告らは、本件建物に居住してこれを占有している。

三  よつて原告は被告らに対し、右建物所有権に基づき、本件建物の明渡を求める。

(被告らの認否)

認める。

(被告らの抗弁)

被告らは、広島学生会館入居者(以下、館生という。)の代表である広島学生会館自治会(以下、自治会という。)と原告との間で昭和二六年五月四日に定められた広島学生会館運営要綱及び入退館規則並びに右の多年にわたる運用によつて形成された入館者の選考その他会館の直接的管理運営は自治会が委託をうけて行う旨の事実たる慣習又は慣習法若しくは自治会と原告広島支部(以下、支部という。)事務長三田訓治との間で昭和四〇年四月二七日に締結した、今後の入館選考については、実質的な選考、面接等は館生が行い、入館募集は話合いがつくまで原告が従来の書類によりこれを行う旨の契約及び同じく右両者間で同年五月一四日に締結した、入館選考については支部側が自治会に委託し、支部が直接にこれを行わず、現在運営委員会は作らない旨の契約に基づき、自治会が設置した入館選考委員会による入館募集、選考等の所定の手続を経て昭和四〇年四月から同四五年四月頃までの間に入館を許されて居住しているものである。

なお、昭和四〇年五月以降自治会によるもののほかに入館選考が行われたことはない。

(認否)

原告は、自治会に対し広島学生会館の管理運営を委託したことはないし、被告ら主張のような事実たる慣習ないし慣習法は存在しない。

また三田訓治は支部事務長として上司の命を受けて事務を掌つているものにすぎないのであつて支部役員ではないから、当然には原告を代理して自治会と入館選考についての契約を締結する権限を有していないし、原告は右の如き権限を同人に与えたこともない。さらに右契約にかかる確約書の三田訓治の署名は、いずれも署名以外の部分を館生達が記載して同人に対し署名を迫つたので、同人はその意に反してこれをなしたものである。

なお、広島学生会館運営要綱及び入退館細則は、原告が一方的に定めたものであつて、原告と自治会とが合意したうえで協同して定めたものではない。

また原告は、各主要都市に設置している学生会館の管理運営を統一して円滑適正に行う必要から、財団法人学徒援護会学生会館管理規程(以下、管理規程という。)を制定して昭和三九年一一月七日から施行しているところ、管理規程によれば、入館者の選考は支部の管理責任者である支部長が行い、入館許可は原告理事長が行うこととなつている。被告らは、右管理規程所定の手続を経ないで本件建物に居住しているものである。

第三  証拠関係(省略)

選定者目録(省略)

物件目録

広島市南千田東町一一〇四番地の一、一一〇五番地の三

家屋番号二〇五番

木造瓦葺二階建会館一棟

一階 五四五・四五平方メートル

二階 四二三・一四平方メートル

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